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大賞作品『天のこと』
【あらすじ】
失恋をきっかけに馴染みのない町で暮らすことにした明瑠は「天」と名乗る鬼退治に来た用心棒の男と出会う。「あんたを鬼にしないために来た」と言う天の正体は、鬼とは、何か。
邪気がはびこるこの町はどこかおかしい、引っ越してきたのは間違いだったと後悔し、逃げ出そうとする明瑠に天は「すべてはあんたのせいだ。逃げたところで変わらない」と言い放つ。
人はみんな弱いから、ひとりでは生きていけないから、だからいつも何かを求める。明瑠は玲子さんや青戸伸弥と出会い、優しい人ほど傷つきやすく邪気にとりつかれやすいと気付く。優しい人が巣食われる。優しい人ほど痛みを持つ。そして耐えきれなくなって鬼となる。それはその人が本当はいい人だという証ではないのか。疲れた心に邪気はしのびこみ取りつかれて鬼になった方が楽、と思わせる。けれどいいものに触れれば消えるものもある。邪気は人の心が産み、育て、伝染するのだ。天と邪気を祓ううち、明瑠は己の心の内にあるものに気付く。
めぐり合わせとは不思議なものだ。この町へ来たこと、出会った人、起こったこと、すべてはただひとつへと繋がり、この町は明瑠にとってかけがえのない場所へと変わった。

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