【受賞の言葉】
このたびは素晴らしい賞をいただき、感謝に堪えません。
最近毎年のように知人の逝去が続いていることから、小説の創作を通して、生きるということを私なりに深めていきたいと考えたのが、応募の動機でした。
小説を書き上げて、強く心に刻まれたのが、いのちのいとおしさです。書きながら、イメージの世界で作中人物たちに、「生きるって、つらいこともあるけど、味わい深くて素敵なことだよね」と語りかける私がいました。
これからも精進して、仕事に創作に、励んでまいります。ありがとうございました。
【あらすじ】
生活困難者のための施設「めぐみ荘」で働く70歳の中島博志は、健康診断で内臓に腫瘍のようなものが見つかり、一週間後に精密検査を受けることになった。
その一週間の間、博志は自分の人生を振り返り、彼にとって大切な数人の人に会った。路上生活をしていた時の仲間である、元会社社長の河合さん、元流しの歌手山下さん。自由を求めてすべてを放棄した禅宗僧侶の宗閑さん。小料理屋の女将の和江さん。
また、めぐみ荘でも森村さんという入所者が病死する出来事があり、入所者やホームヘルパーさんとの交流の中で、生と死への思いが深まっていった。
精密検査を明日に控えた日、江戸川の土手で博志は一週間を振り返り、孫娘と電話で話をし、生きる意欲を確かめるのだった。
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